【第8回】遺言「１８番グリーンに」　前編

2016.10.12　|　篠原嗣典

　Ｋさんはそのコースを愛していた。そのことは有名な話で、家族はもちろん、友人たちも知っていた。

　Ｋさんは今年に入ってすぐに亡くなった。昨年の春のゴルフが最後のラウンドになった。

　８カ月の間、ゴルフをしないことはＫさんにとってゴルフを始めてから初めてのことだった。病気だから仕方がない、と自分をなぐさめていたらしいが、亡くなった後に病室から運び出されるゴルフ関連のあらゆる雑誌の量が、その無念を証明していた。

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